相続税対策の本質|会社員が今すぐ始めるべき資産防衛の構造

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TEKO編集部

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内資系製薬→M&A仲介→外資系製薬
「本業+α」を提唱
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1,500万円、都内に持ち家、金融資産3,000万円

「自分はまだ相続なんて関係ない」と思っているなら、少し立ち止まってほしい。

国税庁の統計によると、2022年の相続税の課税対象となった被相続人は全体の9.6%に達した。10年前(2012年)は4.3%だったから、実に倍以上に増えている。都市部ではさらに高く、東京都では約16%が課税対象だ。

この記事では、相続税の「構造」を正確に理解したうえで、多忙なハイキャリア会社員が今から取り組める具体的な対策を整理する。感覚論ではなく、数字と仕組みで考えていこう。

相続税対策の本質|会社員が今すぐ始めるべき資産防衛の構造 - 都心の高層マンション群を見上げる角度で撮影した夕暮れ時の風景

01「自分には関係ない」が一番危ない理由

相続税は、資産が一定額を超えた場合にのみかかる税金だ。基礎控除は「3,000万円600万円×法定相続人の数」で計算される。

たとえば法定相続人が2人(配偶者+子1人)なら、基礎控除は4,200万円。これを超える部分に課税される。

一見「余裕がある」ように見えるこの基礎控除だが、都市部の不動産を持つ会社員には思いのほか小さい壁だ。

国土交通省の地価公示(2024年)によると、東京都の住宅地平均価格は1平方メートルあたり約73万円。60坪(約200㎡)の土地なら、それだけで1億4,600万円になる計算だ。

自宅の土地だけで基礎控除を大きく超えてしまう——これが都市部の会社員が直面する現実である。

相続税対策の本質|会社員が今すぐ始めるべき資産防衛の構造 - 閑静な住宅街の一戸建てと青空を映した穏やかな昼間の風景

相続税の税率構造を正確に把握する

相続税は累進課税だ。課税遺産総額に応じて税率が変わる。

課税遺産総額 / 税率 / 控除額 比較
課税遺産総額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円 55% 7,200万円
1,000万円以下
税率10%
控除額
3,000万円以下
税率15%
控除額50万円
5,000万円以下
税率20%
控除額200万円
1億円以下
税率30%
控除額700万円
2億円以下
税率40%
控除額1,700万円
3億円以下
税率45%
控除額2,700万円
6億円以下
税率50%
控除額4,200万円
6億円
税率55%
控除額7,200万円

(出典:国税庁「相続税の税率」)

課税遺産総額が2億円なら、最高税率40%が適用される部分が生じる。

冒頭の「相続税2,160万円」という数字は、決して大げさではないのだ。

02相続税の「計算構造」を一度だけ丁寧に理解する

複雑そうに見える相続税だが、計算の流れは意外とシンプルだ。一度だけ正確に把握しておくと、対策の優先順位が見えてくる。

前提条件
前提: 総資産2億円(自宅土地8,000万円、建物1,000万円、金融資産1億1,000万円)、法定相続人2名(配偶者+子1人)
計算式
計算:
①正味遺産額 = 2億円(債務・葬儀費用等は除く)
②基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 2名 = 4,200万円
③課税遺産総額 = 2億円4,200万円 = 1億5,800万円
④法定相続分で按分: 配偶者 7,900万円 / 子 7,900万円
⑤各人の仮算出税額: 7,900万円 × 30%700万円 = 1,670万円 × 2名 = 3,340万円
⑥配偶者控除適用後(配偶者の税額軽減): 配偶者分は実質ゼロになるケースが多い
結果
結果: 子の相続税負担 約1,670万円(配偶者が先に亡くなる「二次相続」では別途試算が必要)

ここで注目したいのが「二次相続」の問題だ。配偶者が先に亡くなった場合や、一次相続で配偶者が全財産を相続した場合、二次相続では配偶者控除が使えない。結果として子の負担が一気に膨らむ。

※相続税の具体的な計算は個人の状況によって大きく異なります。税務判断は必ず税理士にご確認ください。

03対策の「3つの軸」——何から手をつけるか

相続税対策には大きく3つのアプローチがある。それぞれの効果とコスト・流動性・税制優遇を整理すると、取り組む優先順位が見えてくる。

相続税対策の本質|会社員が今すぐ始めるべき資産防衛の構造 - 木製のデスクの上にノートと万年筆、コーヒーカップが置かれた落ち着いた書斎の風景
対策の軸 / 主な手法 / 効果の大きさ / 流動性 / 実行難易度 比較
対策の軸 主な手法 効果の大きさ 流動性 実行難易度
課税財産の圧縮 不動産投資・生命保険 低〜中
財産の移転 生前贈与・教育資金贈与 中〜大
納税資金の確保 生命保険・流動資産管理
課税財産の圧縮
主な手法不動産投資・生命保険
効果の大きさ
流動性低〜中
実行難易度
財産の移転
主な手法生前贈与・教育資金贈与
効果の大きさ中〜大
流動性
実行難易度
納税資金の確保
主な手法生命保険・流動資産管理
効果の大きさ
流動性
実行難易度

それぞれを詳しく見ていこう。

軸①:課税財産の圧縮——不動産の「評価減」を使う

不動産は相続税対策の王道だ。理由はシンプルで、現金1億円はそのまま1億円として課税されるが、不動産に換えると評価額が大きく下がるからだ。

土地の相続税評価(路線価方式)は時価の約80%、建物は固定資産税評価額(時価の約60〜70%)で計算される。さらに賃貸に出すと「貸家建付地」として評価がさらに下がる仕組みだ。

国税庁の財産評価基本通達によると、貸家建付地の評価額は「自用地評価額 ×(1 – 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)」で計算される。東京都心部の借地権割合60〜70%、借家権割合30%を当てはめると、評価額は自用地比で約18〜21%減となる。

現金1億円を賃貸用不動産に変換すると、相続税評価額が5,000〜6,000万円台になるケースも珍しくない。

ただし、不動産投資には空室リスク・流動性リスクが伴う。「節税のためだけに買う」のは危険だ。キャッシュフローが成立する物件かどうかを先に確認すること。

軸②:財産の移転——生前贈与の「時間軸」を活用する

生前贈与は時間をかけるほど効果が出る対策だ。

2024年の税制改正により、生前贈与の相続財産への加算期間が「3年」から「7年」に延長された(2024年1月1日以降の贈与から適用)。長期的な視点がより一層重要になっている。

基本的な枠組みを整理すると:

  • 暦年贈与:年間110万円まで非課税。毎年コツコツ移転できる
  • 教育資金の一括贈与1,500万円まで非課税(金融機関での管理が必要)
  • 住宅取得等資金の贈与:最大1,000万円まで非課税(省エネ住宅の場合)
  • 結婚・子育て資金の一括贈与1,000万円まで非課税

暦年贈与を10年間継続すると、子1人あたり1,100万円を非課税で移転できる。子が2人なら2,200万円だ。

相続税対策の本質|会社員が今すぐ始めるべき資産防衛の構造 - 公園のベンチで親子が並んで座り、穏やかに話しているシーン

軸③:納税資金の確保——「生命保険の非課税枠」は使わないと損

意外に見落としがちなのが、生命保険の非課税枠だ。

500万円 × 法定相続人の数」が非課税になる。相続人が2人なら1,000万円、3人なら1,500万円が丸ごと非課税で受け取れる。

さらに、死亡保険金は「みなし相続財産」として扱われるため、遺産分割協議の対象外だ。受取人を指定しておけば、スムーズに納税資金を確保できる。

一時払い終身保険を活用すると、現金を保険に換えるだけで非課税枠を使いながら納税資金を確保できる。多忙な会社員には「一度設定すれば動かさなくていい」という点でも使いやすい仕組みだ。

04ケーススタディ:外資コンサル勤務・45歳・資産2億円の場合

相続税対策の本質|会社員が今すぐ始めるべき資産防衛の構造 - ガラス張りのオフィスビルのロビーで、スーツ姿の男性がスマートフォンを操作しているシーン

具体的なイメージをつかむために、一つのケースを見てみよう。

プロフィール

  • 年齢:45歳、外資系コンサルティングファーム勤務
  • 年収:2,200万円
  • 資産:自宅(都内・土地評価8,000万円+建物1,500万円)、金融資産1億円、合計2億円
  • 家族:配偶者(専業主婦)、子2人(16歳・13歳)

このケースで何も対策しなければ、一次相続後の二次相続(子2人が相続人)では課税遺産総額が大きく膨らむ可能性がある。

取り組んだ対策(3年間)

1
生前贈与の開始
子2人に毎年各110万円の暦年贈与を開始。3年間で合計660万円を非課税移転
2
生命保険の活用
一時払い終身保険に3,000万円を移転。非課税枠(500万円×3人=1,500万円)を確保しつつ、残りは評価圧縮
3
賃貸不動産の取得
都内ワンルーム2室(計6,000万円)を購入。評価額は路線価+貸家評価で約3,800万円まで圧縮。課税財産を約2,200万円削減
4
遺言書の作成
公正証書遺言を作成し、二次相続を見据えた財産分割の方針を明文化
5
定期的な見直し
年1回、税理士と資産状況を確認。制度改正への対応を継続

3年間の対策で、試算上の相続税負担を約800万円1,000万円削減できた。

重要なのは、どれか一つに頼るのではなく、複数の対策を組み合わせる「ポートフォリオ思考」だ。不動産一本に頼ると流動性が下がる。生前贈与だけでは時間が足りないこともある。

05「対策の先送り」が一番コストが高い

ここで少し立ち止まって考えてほしいことがある。

相続税対策は「始める時期」が結果を大きく左右する。

暦年贈与は年間110万円が上限だ。50歳から始めると、80歳まで生きたとして30年間で子1人あたり3,300万円移転できる。一方、65歳から始めると15年間で1,650万円。同じ「毎年110万円の贈与」でも、開始時期によって移転できる財産に2倍近い差が出る。

行動経済学の観点から見ると、人は「将来の損失」を過小評価しやすい。「まだ元気だから」「親の相続が終わってから考えよう」——この先送りバイアスが、最終的な税負担を何百万円も引き上げる。

財務省の統計によると、2022年度の相続税収は約2.7兆円。この数字は2012年度(約1.4兆円)のほぼ2倍だ。課税ベースの拡大と資産価格の上昇が重なり、相続税はもはや「富裕層だけの問題」ではなくなっている。

相続税対策の本質|会社員が今すぐ始めるべき資産防衛の構造 - 砂時計と手帳が並んだデスクの上のクローズアップ写真

06不動産投資を「節税ツール」として使う際の3つのリスク

不動産の評価圧縮効果は強力だ。だが、節税目的だけで不動産を購入することには明確なリスクがある。

リスク①:空室・賃料下落リスク

賃貸不動産の評価圧縮効果は「賃貸割合」に依存する。空室が多いと評価減の恩恵が薄れる。さらに、空室が続けばキャッシュアウトが発生し、本来の資産防衛目的に反する。

国土交通省の住宅・土地統計調査(2023年)によると、全国の空き家率は13.8%と過去最高を更新した。立地・築年数・管理状態の精査は必須だ。

リスク②:国税庁による「総則6項」の適用リスク

2022年4月の最高裁判決(いわゆる「タワマン節税」訴訟)は業界に衝撃を与えた。財産評価基本通達の評価額と実勢価格が著しく乖離している場合、国税庁は通達によらず時価で課税できる(総則6項)と認定されたのだ。

「評価額を下げればいい」という単純な発想だけでは、税務リスクを招く可能性がある。

リスク③:流動性の低下

不動産は現金化に時間がかかる。相続発生後10ヶ月以内に相続税を納付する必要があるが、不動産しか財産がない場合、延納・物納の手続きが必要になることもある。

資産全体のうち不動産の比率が高くなりすぎると、納税資金の確保が難しくなる。金融資産とのバランスを常に意識すること。

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07今すぐ確認すべきチェックリスト

対策を始める前に、まず自分の現状を把握することが先決だ。

  • 自分の総資産額(不動産・金融資産・保険・退職金見込み)を把握している
  • 法定相続人の人数と基礎控除額を計算した
  • 現状の相続税試算額を税理士に確認した
  • 生前贈与の開始時期と年間贈与額を決定した
  • 生命保険の非課税枠(500万円×相続人数)を活用しているか確認した
  • 不動産の相続税評価額(路線価ベース)を把握している
  • 遺言書(公正証書)を作成済みか確認した
  • 二次相続のシミュレーションを行った

一つでも「確認できていない」項目があれば、そこから手をつけるのが現実的だ。

08まとめ:相続税対策は「設計」と「時間」の問題

  • 相続税の課税対象は急拡大中。都市部の不動産を持つ会社員は、今すぐ試算してみる価値がある
  • 対策の3軸(課税財産の圧縮・財産の移転・納税資金の確保)を組み合わせることが重要。どれか一つへの依存はリスクを生む
  • 不動産投資は有力な手段だが、節税目的だけで購入するのは危険。キャッシュフロー・流動性・税務リスクの3点を必ず検証する
  • 始める時期が早いほど効果は大きい。暦年贈与は時間軸が命。先送りは最大のコストだ

相続税対策は一度設計すれば終わりではない。税制改正・資産価値の変動・家族構成の変化に合わせて定期的に見直すことが、長期的な資産防衛につながる。

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本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・不動産の購入を推奨するものではありません。相続税の計算・対策については、個人の状況により大きく異なります。具体的な対策を検討する際は、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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