資産形成
会社員の与信で資産形成|フリーランスとの比較で見えた強み
フリーランスとして働く女性の多くが、正社員とは異なるお金の不安を抱えている——。
そんな調査結果が最近、注目を集めた。不安の内訳を見ると「老後資金」「収入の不安定さ」「社会保険の負担」が上位を占める。そして対策として最も多く挙げられたのが、「収入アップ」と「資産形成」の2つだ。
この調査が面白いのは、フリーランスの悩みを映し出すことで、会社員が「当たり前」と思って見過ごしている優位性を逆照射している点にある。本記事では、そのデータを出発点に、ハイキャリア会社員が持つ構造的な強みを資産形成にどう活かすかを、具体的な数字とともに掘り下げる。

01まず比較する:会社員とフリーランス、資産形成のスタートラインはどう違うか
会社員とフリーランスの資産形成能力の差は、手取り収入だけでは測れない。融資・税制・社会保障の3軸で比較すると、差の大きさがよくわかる。
| 比較軸 | 会社員(高属性) | フリーランス |
|---|---|---|
| 金融機関の融資評価 | 勤続年数・源泉徴収票で高評価 | 確定申告3期分が必要、審査通過率が低い |
| 不動産ローン上限 | 年収の7〜10倍が目安 | 年収の5〜7倍、かつ審査が厳格 |
| 節税手段の幅 | iDeCo・住宅ローン控除・法人化 | 経費計上の自由度は高いが社会的信用が低い |
| 社会保険 | 会社が半額負担(実質コスト低) | 全額自己負担(国民健康保険+国民年金) |
| 老後の年金 | 厚生年金+国民年金 | 国民年金のみ(月額上限約6.8万円) |
この表を見ると、フリーランスが「収入アップ」と「資産形成」を最優先課題に挙げる理由がよくわかる。スタートラインが違うのだ。
会社員、とりわけ年収1,000万円を超えるハイキャリア層は、この比較表の左列をすべて持っている。問題は、その優位性を「使いこなしているか」どうかだ。

02「与信」とは何か——数字で理解する会社員の借入ポテンシャル
与信とは、金融機関が「この人にいくら貸せるか」を判断する信用枠のこと。会社員の与信は、主に以下の要素で決まる。
- —年収(源泉徴収票ベース)
- —勤続年数(3年以上で評価が安定)
- —勤務先の規模・業種(上場企業・公務員・医師は最上位)
- —既存の借入残高(住宅ローン含む)
年収1,200万円の大手商社勤務・勤続8年のAさんの場合、不動産投資ローンの上限は概ね8,400万〜1億2,000万円に達する(年収の7〜10倍換算)。
フリーランスが同じ年収1,200万円を稼いでいても、確定申告3期分の提出が必須で、経費控除後の「所得」で審査されるため、実際に借りられる金額は大幅に下がる。
厚生労働省の「令和4年就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、フリーランスの収入の変動係数は会社員の約2.3倍。金融機関がこの不安定性を嫌うのは、ある意味合理的な判断だ。
03なぜ今、不動産投資なのか——インフレ時代のリアルリターン
与信の話をするなら、その使い道も具体的に考える必要がある。現状、ハイキャリア会社員の与信活用先として最も合理性が高いのは、収益不動産だ。
理由は3つある。
① インフレヘッジとしての実物資産
日本銀行の統計によると、2024年の消費者物価指数(CPI)は前年比2.7%上昇(生鮮食品除くコアCPI)。預金金利がほぼゼロの環境では、現金保有は実質的な目減りを意味する。不動産は家賃収入が物価に連動しやすく、インフレ下でのリアルリターン確保に有効だ。
② レバレッジによる資産効率の向上
2,000万円の自己資金を株式に全投入した場合と、不動産の頭金として活用した場合を比べると、後者は1億円超の資産を運用することになる。同じ5%の利回りでも、絶対額のリターンが5倍以上異なる。
③ 純資産の増加とインフレヘッジ効果
不動産所得は給与所得と損益通算できる。また、RC造の収益物件は長期にわたって安定したキャッシュフローを生み出しながら、インフレ局面での資産価値維持・向上が期待できる。ローン返済が進むにつれて純資産が着実に積み上がる点も、長期資産形成において大きなメリットだ(※税務判断は税理士にご確認ください)。
国税庁の「令和4年分 申告所得税の実態」によると、不動産所得の申告者数は約350万人。そのうち給与所得との合算申告者は全体の約40%を占め、節税目的での活用が広く行われていることがわかる。
04ケーススタディ:年収1,500万円の外資コンサル・38歳が5年で構築した不動産ポートフォリオ
抽象論だけでは伝わりにくいので、具体例で見てみよう。
プロフィール
- —Bさん、38歳、外資系コンサルティングファーム勤務
- —年収1,500万円(うち変動ボーナス約400万円)
- —金融資産3,000万円(うち投資可能額2,000万円)
5年前の状況
インデックス投資(オルカン・S&P500)に毎月30万円を積み立てていたが、「給与が上がるほど税金が増えるだけ」という閉塞感を感じていた。
実施した戦略
5年後の結果
物件の資産価値は取得時とほぼ横ばい(RC造のため値崩れが少ない)。一方、ローン元本の返済が進んだことで純資産は着実に増加。キャッシュフローの累計は約600万円。さらに、インフレ局面における実物資産の保有メリットを享受しながら、インデックス投資と合わせた分散ポートフォリオとして機能している。
「インデックス投資だけでは得られなかった実物資産のインフレヘッジ効果と、純資産の着実な積み上げを実感できた」とBさんは語る。
05行動経済学の罠——ハイキャリアが陥りやすい「先送りバイアス」
ここで一度、立ち止まって考えたい。
与信という優位性を持ちながら、多くのハイキャリア会社員が資産形成を本格的に始めていない。なぜか。
行動経済学の研究では、高収入・高学歴の人ほど「現状維持バイアス」と「過信バイアス」が合わさった形で意思決定を遅らせる傾向があることが示されている。ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」でも触れられているように、人間は損失を利得の約2倍大きく感じる。
不動産投資の場合、「失敗したらどうしよう」という損失回避の感情が、「やらないことで生じる機会損失」への感覚を上回りやすい。
しかし、冷静に数字を見れば話は変わる。
年収1,500万円の会社員が何も投資しなかった場合、インフレ率2.7%の環境では、現金1,000万円の実質価値は10年後に約763万円まで目減りする。「何もしない」こと自体がリスクだ。
フリーランスが「資産形成が急務」と感じるのは、この危機感を持たざるを得ない環境にいるからでもある。会社員は安定しているがゆえに、その危機感が薄れやすい。
06「与信を使う」前に確認すべき5つの判断基準
与信活用は万能ではない。自分の状況に合っているかを確認してから動くことが重要だ。
以下のチェックリストで自己診断してほしい。
- ✓年収が安定していて、今後3〜5年の収入見通しが立っている
- ✓月々の生活費・教育費・保険料を除いた余剰キャッシュが月20万円以上ある
- 住宅ローン残高が年収の5倍以内に収まっている
- 金融資産(預貯金・投資)が最低でも年収の1倍以上ある
- 不動産投資について、物件選定・融資・管理の基礎知識を習得している
上記のうち、チェックが4つ以上ついた人は、与信活用を具体的に検討するフェーズにある。3つ以下の場合は、まず金融資産の積み上げと知識習得を優先すべきだ。
また、年収別の大まかな目安を整理すると次のようになる。
| 年収帯 | 推奨アクション | 優先すべき投資先 |
|---|---|---|
| 1,000万〜1,200万円 | iDeCo・NISA満額活用(生涯投資枠1,800万円)→ 収益不動産の検討開始 | インデックス投資+小規模不動産(区分マンション) |
| 1,200万〜1,800万円 | 与信を活用した1棟物件の取得が現実的 | RC造・都市部の1棟マンション |
| 1,800万円以上 | 法人設立による不動産管理・節税の高度化 | 複数棟・法人名義での資産拡大 |
※これはあくまで目安。個別の状況(家族構成・既存ローン・リスク許容度)によって大きく変わる。
07見落としがちなリスクと、その対処法
与信活用のメリットを語る一方で、見過ごしてはいけないリスクも整理しておく。
① 金利上昇リスク
日本銀行は2024年3月にマイナス金利を解除し、2024年7月には政策金利を0.25%に引き上げた。変動金利型ローンを使っている場合、金利上昇は返済額の増加に直結する。現在の不動産投資ローンの変動金利は概ね1.5〜2.5%程度だが、今後1〜2%の上昇が起きても収益が成立するかを事前にシミュレーションしておくこと。
② 空室リスク
表面利回りが高くても、空室が続けばキャッシュフローは一気に悪化する。エリア選定と管理会社の質が、空室リスクの大半を左右する。東京23区内・駅徒歩10分以内の物件は、空室率が相対的に低い傾向にある(不動産経済研究所データより)。
③ 本業への影響
不動産所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になる。また、勤務先によっては副業規定に抵触するケースもある(ただし不動産投資は多くの企業で「副業」に該当しない)。就業規則の確認は必須だ。
④ 流動性リスク
不動産は株式と異なり、すぐに現金化できない。「いざとなれば売れる」という楽観は禁物。流動性の低い資産に自己資金の大半を投じるのは避け、手元に最低でも生活費の6ヶ月分+緊急資金を確保した上で投資に臨むこと。
08まとめ:フリーランスの「不安」が教えてくれる、会社員の「未使用の強み」
今回の調査が示したのは、フリーランスのお金の不安という事実だけではない。裏を返せば、会社員という属性が持つ「使われていない優位性」の大きさだ。
- —フリーランスの多くが感じるお金の不安は、社会保険・年金・融資の3つの構造的不利に起因する
- —会社員の与信枠は、年収1,200万円クラスで最大1億2,000万円に達する。この枠を活用しないのは、使われないまま眠る資産と同じだ
- —不動産投資は、インフレヘッジ・レバレッジ・純資産の積み上げの3つが重なる数少ない資産形成手段。特に高所得者にとって、長期的な資産防衛と拡大の手段として有効に機能する
- —先送りバイアスは最大の敵。「いつか始めよう」という思考が、インフレによる実質的な資産目減りを加速させる
ただし、与信の活用は「借りられるから借りる」という発想では危うい。自分の財務状況・リスク許容度・本業との両立可能性を冷静に評価した上で、計画的に動くことが前提だ。
あなたが今どのフェーズにいるか——それを把握するところから、資産形成の本当のスタートが始まる。
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本記事に含まれる税務・法律に関する情報は一般的な解説を目的としており、個別の税務判断については必ず税理士・ファイナンシャルプランナーにご相談ください。融資条件は金融機関・審査時点によって異なります。
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