介護保険料の仕組み徹底解説:40代・高収入者の盲点

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TEKO編集部

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40歳になった瞬間から、気づかないうちに給与から引かれている費用がある。

介護保険料だ。

「なんとなく天引きされているもの」として流してしまいがちだが、年収1,000万円超の会社員にとって、この保険料の動向は無視できない金額になってくる。2024年10月には標準報酬月額の上限引き上げという大きな制度変更があり、高収入者の社会保険料負担はさらに重くなっている。

この記事では、介護保険料の仕組みを年齢・所得別に丁寧に解説する。「なんとなく引かれているもの」から「構造的に把握すべき制度」へ。認識をアップデートしてほしい。

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01押さえておきたい要点

  • 介護保険料は「40〜64歳」と「65歳以降」で制度が全く異なる
  • 2024年10月から標準報酬月額上限が引き上げられ、高収入者の負担は年数万円増加
  • 65歳以降は自治体ごとに保険料が異なり、所得水準によって基準額の最大数倍になることがある
  • 社会保険料控除の正確な申告が、高所得者には特に効いてくる

02なぜ「40歳から」なのか――制度設計の背景にある論理

介護保険制度が施行されたのは2000年のこと。

高齢化社会の進展により、介護を家族だけで担う限界が社会問題として顕在化してきた時代だ。「介護の社会化」を目指し、保険料を広く集めてサービスを提供する仕組みが構築された。

なぜ40歳が起点になっているかというと、「中年以降は自分自身も親の介護に直面する可能性が高まる」という考え方からだ。40歳は、親の介護と自分の老後準備が重なり始める人生の転換点として位置づけられている。

介護保険の被保険者は年齢で2つに分類される。

第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40〜64歳)だ。

この2つは、保険料の決まり方も徴収方法も根本的に違う。この違いを正確に理解しているかどうかで、自分の負担額を正しく把握できるかが変わってくる。

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0340〜64歳の介護保険料:給与から天引きされる仕組み

第2号被保険者(40〜64歳)の場合、介護保険料は健康保険料と一緒に給与から天引きされる

会社員は勤め先の健保組合または協会けんぽに加入しており、介護保険料はその健保を通じて徴収される。厚生労働省のデータによると、協会けんぽの介護保険料率は1.60%2024年度)。この料率に標準報酬月額を掛け、労使折半で負担する仕組みだ。

実際の計算を見てみよう

前提条件
前提: 標準報酬月額50万円の会社員(40〜64歳)、協会けんぽ加入
計算式
計算: 介護保険料 = 50万円 × 1.60% = 8,000円/月(労使合計)
本人負担 = 8,000円 ÷ 2 = 4,000円/月
結果
結果: 年間本人負担 = 4,000円 × 12カ月 = 48,000円/年

これに健康保険料・厚生年金保険料が加わるため、総社会保険料の負担は相当な額になる。

健保組合に加入している場合は組合独自の料率が適用される。大企業の健保組合は協会けんぽより低い料率のケースもあれば、逆に高いところもある。自分の加入先の保険料率を確認しておくことが基本だ。

2024年10月の重大な変更点

2024年10月に施行された標準報酬月額の上限引き上げは、高収入者にとって見逃せない変化だ。

従来の上限は月65万円だったが、改定後は上位等級の新設により98万円まで引き上げられた。

項目 / 改定前 / 改定後(2024年10月〜) 比較
項目 改定前 改定後(2024年10月〜)
標準報酬月額の上限 65万円/月 98万円/月
介護保険料・本人負担(上限時) 約5,200円/月 約7,840円/月
年間本人負担の増加分 約31,200円増
標準報酬月額の上限
改定前65万円/月
改定後(2024年10月〜)98万円/月
介護保険料・本人負担(上限時)
改定前約5,200円/月
改定後(2024年10月〜)約7,840円/月
年間本人負担の増加分
改定前
改定後(2024年10月〜)約31,200円増

月収100万円を超えるような高収入者の場合、この変更だけで年間3万円以上の負担増が生じる。健康保険料・厚生年金保険料も同様の上限引き上げが適用されるため、社会保険料全体の増加額はさらに大きい。

「給与明細の手取りが減った気がする」と感じている40代のハイキャリア層は、この変更が一因である可能性が高い。

0465歳以降の介護保険料:自治体で変わる保険料の現実

第1号被保険者(65歳以上)になると、介護保険料の仕組みが根本的に変わる。

健保からではなく、住民票がある市区町村が直接徴収する。そして保険料の基準額は市区町村ごとに設定されるため、どこに住んでいるかによって保険料が大きく変わる。

厚生労働省の調査によると、2021〜2023年度(第8期)の全国平均基準月額は6,014円。しかし最低水準の自治体と最高水準の自治体では、基準額に倍以上の格差がある(同省「介護保険事業状況報告」)。

さらに、この基準額を起点に所得段階に応じた多段階制が適用される。高所得者は基準額の1.5〜1.7倍以上の保険料を支払うことになる。

年金から天引きか、口座振替か

65歳以降の保険料徴収には2種類ある。

特別徴収(年金から天引き)は年金受給額が年額18万円(月1.5万円)以上の場合に適用される。介護保険料・国民健康保険料・後期高齢者医療保険料などが年金から直接引かれる仕組みだ。

年金月額15万円の場合、そこから介護保険料が天引きされるため、実際に受け取れる手取り額はさらに少なくなる。「年金をもらい始めたのに思ったより少ない」という感覚の一因がここにある。

前提条件
前提: 東京23区在住、65歳以上、合計所得金額200万円の場合
計算式
計算: 基準月額(令和6年度・23区平均)約6,400円 × 所得段階倍率1.7倍
結果
結果: 月額約10,880円 → 年間約130,560円の介護保険料負担

この金額は所得が高いほど段階的に増える。資産運用収入や年金収入が多い高所得の65歳以上は、年間15万円を超えることも珍しくない。

05高収入者が見落としがちな「制度の盲点」

介護保険料に関して、ハイキャリア層が意外と把握していないポイントがいくつかある。

盲点①:40歳到達「月」の細かいルール

40歳の誕生日を迎えた月から介護保険料の徴収が始まる。

ただし民法の規定により、誕生日が「1日」の人は前月の末日が年齢計算上の誕生日とみなされる。たとえば6月1日生まれの人は5月末に40歳になるため、5月分の保険料から徴収が開始される。「まだ40歳になっていないはずなのに」と思って給与明細を見ると混乱するのは、このルールを知らないからだ。

盲点②:65歳以降は「第2号分」が消える

40〜64歳の間は健保経由で介護保険料を払っているが、65歳になると健保への介護保険料の支払いは終了する。代わりに市区町村から第1号被保険者として保険料が課される。

この切り替えを知らずに「65歳で介護保険料が突然増えた」と誤解する人がいるが、徴収元が変わっただけで二重払いにはなっていない。

盲点③:社会保険料控除で全額控除できる

介護保険料は社会保険料控除の対象だ。支払った全額が所得控除になる。

所得税率が33〜45%の高収入者にとって、控除効果は無視できない。年間10万円の介護保険料なら、実質3〜4万円以上の節税効果がある。特に65歳以降に自分で納付する第1号介護保険料は、確定申告で申告しなければ控除が受けられないため、漏れがないか必ず確認してほしい。

盲点④:育児休業中は免除対象になる

育休中は社会保険料が免除されるが、この対象には介護保険料も含まれる。40〜64歳で育休を取得した場合、介護保険料の負担はゼロになる。

状況 / 介護保険料の扱い 比較
状況 介護保険料の扱い
通常の会社員(40〜64歳) 毎月給与から天引き(労使折半)
育児休業中 申請により免除(本人・会社とも)
海外居住・国外転出 適用除外(手続き要)
65歳以上 市区町村が直接徴収(年金天引きまたは口座振替)
通常の会社員(40〜64歳)
介護保険料の扱い毎月給与から天引き(労使折半)
育児休業中
介護保険料の扱い申請により免除(本人・会社とも)
海外居住・国外転出
介護保険料の扱い適用除外(手続き要)
65歳以上
介護保険料の扱い市区町村が直接徴収(年金天引きまたは口座振替)

062040年問題と介護保険料の行方を読む

「介護保険料は今後どうなるのか」——この問いに正直に答えると、上がり続けるとしか言いようがない。

2025年は団塊の世代(1947〜1949年生まれ)が全員75歳以上になる節目だ。そして2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上を迎え、介護需要が爆発的に増加する。

厚生労働省の推計によると、介護が必要な高齢者数は2020年の約690万人から2040年には約1,000万人に達すると見込まれている。介護費用の総額も2020年の約11兆円から2040年には約25兆円規模に膨らむとされる。

この費用をどう賄うかが、制度設計の根本的な問題だ。

進行中の制度改正をどう読むか

2024年の介護保険法改正では、いくつかの重要な方向性が示された。

1
自己負担割合の見直し
一定以上の所得者に2割・3割負担の適用範囲を段階的に拡大
2
第1号保険料の多段階化
所得段階をさらに細分化し、高所得者の負担を増やす方向に
3
居宅介護支援の自己負担導入議論
現在は無料のケアマネジメントに自己負担を設ける案が浮上
4
第2号被保険者の対象年齢拡大
現行40歳以上から、より若い「現役世代全体」への引き下げを検討

特に注目すべきは4つ目の「2号被保険者の対象拡大」の議論だ。

現在40〜64歳が対象の介護保険料を、より若い世代にも課す案が検討されている。まだ確定した話ではないが、30代後半のハイキャリア層にも影響が波及しうる議論として、定期的に情報をアップデートしておく価値がある。

2027〜2029年度改定で保険料はどう動くか

第1号介護保険料は3年ごとに改定される。2024〜2026年度(第9期)の全国平均は月約6,225円程度で推移している。

厚生労働省の試算では、2040年度の第1号介護保険料の全国平均は月9,000円程度に達する可能性があるとされる。現在の約6,000円から1.5倍の水準だ。

高収入で退職後も資産所得や年金収入が多い場合、第1号保険料の最高段階が適用され、月1万5,000円を超えるシナリオも現実的になってくる。老後の生活費シミュレーションには、この上昇トレンドを織り込んでおく必要がある。

07制度を正確に知ることが、実質的な手取りを守る

介護保険料は「払わなければいけないもの」という受け身の認識で終わらせてしまう人が多い。しかし制度の構造を理解することで、できることが見えてくる。

社会保険料控除の漏れがないか確認する

年末調整や確定申告で、介護保険料が正しく社会保険料控除として申告されているか確認しよう。

会社員は通常、天引きされた社会保険料が源泉徴収票に記載され年末調整で自動的に反映される。しかし65歳以降に自分で納付している第1号介護保険料は、確定申告で申告しなければ控除が受けられないケースがある。

所得税率が33〜45%の高収入者にとって、年10〜15万円の介護保険料の控除漏れは3〜7万円近い税負担の差になる。見落としがないよう確認してほしい。

老後シミュレーションに介護保険料を組み込む

資産形成のシミュレーションでは、老後の支出として「医療費」を考慮する人は多いが、介護保険料を固定費として織り込んでいる人は少ない

65歳以降も一定の所得がある場合、介護保険料は年間10万円以上の固定支出になりうる。30年の老後を想定すれば、累計300万円以上のコストになる計算だ。FP(ファイナンシャルプランナー)や税理士とのライフプランニングで、この費用を明示的に扱っておくことを勧めたい。

標準報酬月額と社会保険料の関係を総合的に把握する

副業や役員報酬の設計において、標準報酬月額が社会保険料全体に与える影響は介護保険料だけにとどまらない。

高収入者ほど、給与・賞与の構成と社会保険料の最適化は専門家の知見が活きる領域だ。個別の状況を踏まえた判断が必要なため、税理士や社会保険労務士への相談をおすすめする。

※税務・社会保険の判断は税理士・社会保険労務士にご確認ください。

08まとめ

  • 40〜64歳の介護保険料は健保経由で給与天引き。2024年10月の標準報酬月額上限引き上げにより、高収入者の年間負担は数万円単位で増加している
  • 65歳以降は市区町村が徴収主体に変わり、住んでいる自治体と所得段階によって保険料は大きく異なる。資産所得・年金収入が多い高所得者は基準額の1.7倍以上が適用されることもある
  • 社会保険料控除の申告漏れは、所得税率の高いハイキャリア層にとって数万円単位の実害になる。65歳以降の第1号保険料は確定申告での申告が必要
  • 制度改正は今後も続く2040年に向けて保険料は上昇トレンドが続き、対象年齢の引き下げ議論も進行中。老後の生活費設計に介護保険料の増加を組み込んでおくことが重要だ

介護保険料は「しょうがなく払うもの」ではなく、全体像を把握した上で社会保険料の構造を理解するための重要なピースだ。特に高収入層は負担額が大きいだけに、正確な知識が実質的な手取りを守ることに直結する。

社会保険料・税制の最新情報や、ハイキャリア層の資産形成に関する実践的な知識は、TEKOのメールマガジンでも発信中だ。今後の制度改正の動向も随時お届けする予定なので、関心があればぜひ登録してほしい。

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