年収700万30代前半家業化粧品会社2代目「ちまちましたことしないで、一棟買おうよ」まきさんが語る家族経営×副業で拓くキャリア戦略とは?

まきさん

30代前半家業化粧品会社2代目年収700万

海外輸出コース1期生 / 不動産コース

創業35年の家業が直面した、廃業の二文字

まきさんの父が営む化粧品会社は、ファブレスの企画メーカーとして35年間続いてきた。かつては良い成分を配合し、効能をきちんと伝えればバイヤーが棚に並べてくれる時代があった。しかし業界の評価軸が「どのインフルエンサーを使うのか」へ移り変わるなかで、広告費を潤沢にかけられない中小メーカーの立場は急速に厳しくなった。追い打ちをかけたのがコロナ禍による来店客の激減で、父から「廃業する」「自己破産する」という言葉が出るところまで追い込まれた。

まきさんは薬学部を卒業し、薬剤師の国家資格を持っている。それも自発的な選択ではなく、父から「会社を継ぐなら薬剤師の資格を取ってほしい」と言われたことがきっかけだった。週の半分は別の調剤薬局で薬剤師として勤務し、残りの半分で父の会社を手伝う。将来的には薬局の新規開業も視野に入れており、家業が傾いても会社として存続できる「もう1つの柱」を模索している最中だ。

経営者の息子が見てきた、決断と不安のあいだ

家庭での父と、会社での父はまるで別人だったという。家ではだらけて母に怒られるような一面もありながら、会社では頼りになる経営者として振る舞う。その両面を間近で見てきたまきさんは、経営者に最も求められるのは「決断力と即決能力」だと語る。薬剤師の仕事は処方箋に基づいて正確に調剤することが中心で、自分で判断して道を決める場面は少ない。その対比が、経営者マインドとサラリーマンマインドの違いを肌感覚で理解させた。

家業の危機、子供2人の将来、薬局開業の構想。すべてを自分ひとりで背負い込み、「自分がなんとかしなければ」という思いだけが膨らんでいた。父に何不自由なく育ててもらった記憶があるからこそ、自分の子供にも同じ環境を用意したいという責任感は強い。物欲はほとんどなく、服も妻に選んでもらうような性格だからこそ、稼ぐ動機は徹底して家族に向いている。

融資5行否決と、妻の「一棟買おうよ」

海外輸出を始めたものの、家業と薬剤師の勤務に時間を割かれるなかで大きなブレイクスルーには至っていない。それでも止めずに続けてきたのは、経営者の家に育った人間の粘り強さだろう。不動産に踏み出した際は、父の会社名義を出した瞬間に融資を断られるという壁にぶつかった。5行、6行と否決が続き、プライドも傷つけられた。会社の経営難を身をもって知っているだけに、信用の壁は想像以上に重かった。

当初は区分マンションから始めるつもりだった。ところが妻から返ってきた言葉は「そんなちまちましたことしないで、一棟買おうよ」。自己資金の投入にも「大丈夫だよ」と言い切った。TEKOへの参加費用も、妻に相談したうえで「回収するくらい頑張ってよ」と送り出された。挑戦を支え続ける妻の存在がなければ、1年半の継続はなかったとまきさんは振り返る。

ひとりではなかった、という転換点

副業で月25万ほどの安定収入をつくるまでに1年半かかった。数字だけを見れば控えめに映るかもしれない。だがその裏には、家業の立て直しと薬剤師勤務を並行しながらの稼働がある。忙しくても1日1品は出品する、という地味な継続が土台になっている。子供が夜寝てくれない日もあるが、それでも手を止めないのは、止めた先に待つものを身近に見てきたからだ。

最も大きな変化は、マインドの転換だったという。家業の問題も育児も融資の壁も、すべて自分ひとりで抱え込んでいた。コミュニティに身を置くことで、困ったときに相談できる相手がいること、他のメンバーの実績報告が刺激になること、銀行や物件の具体的な情報が飛び交う環境に身を置けることを知った。経営者マインドで自己責任を背負いつつ、共助の力を借りるという両輪が回り始めた。

三足のわらじを履く34歳が、次の柱をつくる理由

化粧品メーカーの2代目、調剤薬局の薬剤師、そして副業の実践者。三足のわらじを履きながら、まきさんはどれひとつとして手放していない。化粧品業界の構造的な厳しさを知っているからこそ、ひとつの収入源に依存する危うさが骨身に染みている。父が35年かけて守ってきたものを引き継ぐためにも、会社を支えるもう1本の柱が必要だという判断は、現場にいる人間ならではの実感だろう。

迷っているなら早く始めた方がいい、とまきさんは言う。学生時代や時間に余裕があった頃に何もしなかった自分への後悔が、その言葉の裏にはある。派手な実績を語れるわけではない。それでも、家族のために収入の柱を増やし続けるという選択を、1年半やめなかった。経営者の家に生まれた責任感と、妻や仲間に支えられた1年半が、まきさんのキャリア戦略の輪郭をつくっている。

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