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令和7年分確定申告:高所得者が見落とす申告ポイント完全整理
給与所得者の多くは「会社が年末調整してくれるから確定申告は関係ない」と考えている。
その前提は、ある意味で正しい。しかし年収1000万円を超えるハイキャリア層は、年末調整だけでは取りこぼす控除が意外なほど多い。申告することで数十万円単位の税金が戻るケースも珍しくない。
2026年1月〜3月に提出する令和7年分の確定申告。今年は「新NISAの損益整理」「副業・フリーランス収入の申告義務」「定額減税の精算残」という3つの新しい変化が重なる。多忙を理由に放置するのは、文字通りお金を置いてきているようなものだ。
本記事では、ハイキャリア会社員が今年の確定申告で見落としやすい急所を、具体的な数値とケーススタディとともに整理する。
01まず確認:あなたは「申告必須」か「任意で得をする」か
令和7年分の申告義務・有利性を判断する前に、自分がどのカテゴリに入るかを把握することが出発点だ。
確定申告が義務となる代表的なケースは以下の通り。
- —給与収入が2,000万円を超える
- —副業・フリーランス等の給与以外の所得が年間20万円を超える
- —2か所以上から給与を受け取っている
- —株式等を一般口座で取引している
- —住宅ローン控除の初年度である
一方、義務はないが申告すると税金が戻るのが以下のケース。
- —年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた
- —ふるさと納税を6自治体以上に寄付した(ワンストップ特例は5自治体まで)
- —上場株式の損失を翌年以降に繰り越したい
- —セルフメディケーション税制を使いたい(OTC医薬品購入費が年間1万2,000円超)
- —特定支出控除の適用余地がある(後述)

ハイキャリア層が見落としやすいのは後者、「任意申告」の側だ。会社員だからこそ年末調整で完結していると錯覚しがちだが、条件さえ満たせば申告は確実に手取りを増やす手段になる。
02令和7年分で特に注意すべき3つの変化
例年と比べて、今年の申告には3つの新たな留意点がある。
① 定額減税の精算が一部残っている
令和6年(2024年)に実施された「所得税3万円・住民税1万円」の定額減税。給与所得者は源泉徴収の段階で対応済みのケースが多いが、給与水準が高い層では「給与からの控除額が足りなかった」事例がある。
具体的には、年途中に就職・退職があった場合や、年末調整での調整が不完全だった場合に精算が必要になる。税務署から「令和6年分の調整に関するお知らせ」が届いている人は、令和7年分の申告書に定額減税の記載が必要なケースがあるため必ず確認すること。
② 新NISAと特定口座の損益通算に注意
2024年から始まった新NISA口座は非課税口座のため、利益が出ても申告は不要だ。しかし特定口座(源泉徴収あり)での損失と、一般口座の利益を相殺したい場合は確定申告が必要になる。
新NISAをきっかけに投資を拡大し、特定口座でも日本株・ETFを取引している人が増えた。2025年は市場の変動も大きく、特定口座内に含み損・実現損を抱えているケースも多い。損益通算の申告を怠ると、源泉徴収済みの税額を取り戻す機会を失う。
③ ふるさと納税の取り扱いが複雑化している
令和6年10月の制度改正(地場産品基準の厳格化・返礼品の経費率見直し)に伴い、一部自治体で返礼品の変更・廃止が相次いだ。控除額そのものへの影響はないが、改正を機に「寄付先を分散した」人も多い。
ワンストップ特例が使えるのは5自治体まで。6自治体以上に寄付している場合は確定申告が必須で、申告しなければ全額控除が受けられない。「申請書を出したから大丈夫」と思っていても、6自治体以上に寄付していればワンストップ申請は全て無効になる点に注意が必要だ。
03ハイキャリア会社員が見落としがちな控除5選
① 特定支出控除——使える人が多いのに使われていない
これが最も見落とされている控除のひとつだ。
給与所得者は収入に応じた「給与所得控除」が自動適用される。しかし仕事で実際に使った費用(特定支出)が給与所得控除の2分の1を超える場合、その超過分を追加で控除できる。この制度の存在を知らない会社員がまだ多い。
特定支出として認められる主な項目:
- —通勤費(会社支給額を超える部分)
- —転居費(転勤に伴うもの)
- —研修費(職務に直接必要な訓練の費用)
- —資格取得費(業務上直接必要な資格)
- —帰宅旅費
- —図書費・衣服費・交際費(職務と直接関係があるものに限る)
年収2,000万円の場合、給与所得控除の上限は195万円。その2分の1=97.5万円を超える特定支出があれば控除の余地が生まれる。外資系・コンサル勤務で書籍・セミナー・海外出張を自腹で負担しているケースは決して少なくない。勤務先から「業務上必要である」旨の証明書(給与の支払者の証明書)を発行してもらえれば申告できる。
② 医療費控除——家族合算で意外と達する
本人だけでなく、生計を一にする家族全員の医療費を合算できる。対象は病院代・歯科代・処方薬代・通院交通費など。美容目的の施術やサプリメントは対象外なので注意が必要だ。
共働き夫婦の場合、医療費控除は所得の高い方が申告した方が有利だ。所得税率が高いほど控除による節税効果が大きくなる。
国税庁の令和4年分データによると、医療費控除の申告者数は約1,010万人(出典:国税庁「令和4年分 申告所得税標本調査」)。申告できるにもかかわらず手続きをしていない人はさらに多いと推定される。
③ 住宅ローン控除の確認ミス
初年度に確定申告した後は年末調整で完結するが、転職した年・書類提出を忘れた年は年末調整が適用されていないことがある。
令和4年以降に住宅を取得した人は控除率0.7%・最長13年間が適用される(それ以前の取得者は1%・10年間等の別ルール)。年末残高証明書の記載額と給与明細・源泉徴収票の控除額が一致しているかを確認する習慣をつけてほしい。
④ 上場株式の損失繰越——申告しなければ消える
特定口座(源泉徴収あり)で生じた損失は、確定申告することで翌年以降3年間にわたって利益と相殺できる。
申告しなければ損失はその年で消える。2024〜2025年の市場変動で損失を抱えた銘柄がある場合、申告して損失を繰り越すことが賢明だ。繰越した損失は、翌年・翌々年の配当所得や譲渡益と相殺でき、源泉徴収済みの税額を取り戻せる。
⑤ 副業の経費計上——計上漏れが最も多い
副業収入がある場合、収入に対応する経費を適切に計上することで課税所得を圧縮できる。
見落とされやすい経費の例:
- —副業専用のスマートフォン・PC(または按分)
- —自宅で副業をしている場合の家賃・光熱費(使用面積比・使用時間比で按分)
- —副業関連の書籍・セミナー費用
- —取材・打ち合わせの交通費・飲食費
按分比率は「合理的な根拠」があれば認められる。ただし「家賃の100%を副業経費」のような乖離した按分は税務調査で問題になりやすい。
04ケーススタディ:年収1,200万円・40代コンサル勤務Aさんの場合
Aさんのプロフィール:
- —給与収入1,200万円(コンサルティング会社・40代男性)
- —副業(企業向け研修講師)年間収入78万円
- —医療費(本人+配偶者+子2名の合計)31万円
- —ふるさと納税:8自治体に計28万円
- —住宅ローン残高4,500万円(令和5年取得・長期優良住宅)
- —特定口座(源泉徴収あり)で株式の実現損失42万円
申告前の確認と結果:
| 項目 | 内容 | 節税効果(概算) |
|---|---|---|
| 副業収入の申告 | 78万円(経費26万円を計上、所得52万円) | 義務なので申告必須 |
| 医療費控除 | 31万 – 10万 = 21万円控除 | 約6.9万円(所得税33%) |
| ふるさと納税 | 8自治体のためワンストップ不可→申告で28万円控除 | 約9.2万円(所得税33%+住民税) |
| 住宅ローン控除 | 残高4,500万×0.7%=31.5万円 | 年末調整で適用済み確認 |
| 株式損失繰越 | 42万円を翌年以降3年で損益通算可能 | 翌年利益次第で最大13.9万円節税 |
副業収入の申告は義務だが、経費26万円を適切に計上することで課税される副業所得を52万円に圧縮できた。研修資料の作成に使用したPC費用(按分50%)、会場への交通費、専門書籍代が主な経費だ。
医療費控除とふるさと納税の控除を合わせた節税効果だけで、申告年度に約16万円以上の税負担が軽減された。さらに株式損失の繰越が将来の節税につながる。年末調整だけで完結していれば、これらは全て取りこぼしていた金額だ。
05手続きを最小化する実践ステップ
複雑に見えても、段取りを決めておけば数時間で完結する。
06税務調査のトリガーになりやすいミスを知っておく
確定申告は「申告して終わり」ではない。高所得層は税務調査の対象になりやすく、以下のミスが調査のきっかけになりやすい。
副業収入の無申告
フリーランス報酬・講演料・原稿料は、支払元が源泉徴収して税務署に支払調書を提出している。申告していなければ照合で発覚する。国税庁が公開している令和4事務年度の調査データによると、個人に対する税務調査における追徴税額は1件当たり平均約162万円(出典:国税庁「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」)。「少額だから」という油断は禁物だ。
経費按分の乖離
自宅の家賃や通信費を副業の経費として計上すること自体は問題ない。しかし「家賃全額を事業経費」とするような水準は調査対象になりやすい。専有面積比・使用時間比など合理的な根拠を持ち、記録を残しておくこと。
医療費控除の対象外品目の混入
サプリメント・美容目的の施術・予防接種(一部例外あり)は医療費控除の対象外だ。領収書をまとめて合算し、無頓着に申告すると後から修正申告を求められるリスクがある。e-Taxの医療費集計フォームを使って品目を整理しておくと安全だ。
07「制度の構造」から申告を読む
確定申告を「義務的な手続き」と捉えるか、「制度設計の意図を読んで合法的に活用する機会」と捉えるかで、結果が大きく変わる。
日本の所得税制は、高所得者ほど税率は高くなる一方、控除の組み合わせによって課税所得を圧縮できる設計になっている。医療費控除・住宅ローン控除・損失繰越・特定支出控除は、いずれも「使える人が使うべき制度」として用意されたものだ。
たとえば所得税率45%(課税所得4,000万円超)の水準になれば、医療費控除の25万円は所得税だけで11.25万円の節税効果になる。同じ控除でも、所得の低い人とは節税金額が全く異なる。
高所得者ほど「制度の構造を正確に把握すること」の経済的リターンが大きい。これは能力の問題ではなく、税制の設計上の特性だ。
※税務判断は個々の事情により大きく異なります。具体的な申告内容については必ず税理士にご確認ください。
08まとめ
令和7年分確定申告で、ハイキャリア会社員が見落としやすいポイントを整理する。
- —定額減税の精算確認:税務署からのお知らせがあれば令和7年分申告書への記載が必要なケースがある
- —新NISAと特定口座の損益通算:非課税口座と課税口座を区別し、特定口座の損失は申告して繰り越す
- —ふるさと納税が6自治体以上:ワンストップ特例は無効になる。確定申告で全額控除を受ける
- —特定支出控除:外資・コンサル・専門職勤務者には使える余地が大きい。まず試算してみる価値がある
- —医療費控除:家族全員で合算し、高所得者の方が申告する
- —副業収入の経費計上:按分基準を合理的に設定し、証拠を残す
確定申告の締切は2026年3月16日(月・振替)。e-Taxとマイナポータルの連携で、申告の手間は年々下がっている。「面倒だから」という理由で放置するコストは、数万円〜数十万円規模になりうる。
TEKOメールマガジンでは、税制・資産形成に関する実務的な情報を定期配信しています。確定申告後の資産運用設計や節税と資産形成の連動についても取り上げています。今後の情報収集にご活用ください。
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