副業
副業の実態調査で見えた「稼げる人・稼げない人」の分岐点
副業をしている人は増えた。でも、収入が増えた人は思ったより少ない。
パーソル総合研究所が2024年に公表した「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」は、その残酷な現実をデータで示している。副業経験者の約6割が月収5万円未満にとどまる一方、一部の層は月20万円以上を安定的に稼いでいる。
この差はいったい何から生まれるのか。本記事では調査データを丁寧に読み解きながら、ハイキャリア層が「時間を切り売りする副業」から「資産になる事業」へ移行するための思考法を整理する。

01副業人口は増えたが、「稼げている人」は思ったより少ない
副業実施率は約10人に1人。ただし収入の中央値は月3万円前後にとどまる。
パーソル総合研究所の調査(2024年、全国の20〜59歳の雇用者約3万人を対象)によると、副業実施率は11.7%。2018年の第一回調査(7.5%)と比べて着実に上昇している。
政府の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」改定(2022年)や、大手企業の副業解禁ラッシュが追い風になったのは間違いない。
ただ、数字の中身を見るとやや厳しい現実が浮かぶ。
副業収入の分布を見ると、月5万円未満が全体の約60%を占める。月10万円以上はわずか約18%、月20万円以上に絞ると約8%まで絞り込まれる。「副業で稼いでいる」と言えるレベルに達しているのは、副業実施者の中でも上位2割程度というのが実態だ。
| 月収レンジ | 副業実施者に占める割合 |
|---|---|
| 5万円未満 | 約60% |
| 5〜10万円 | 約22% |
| 10〜20万円 | 約10% |
| 20万円以上 | 約8% |
(出典:パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」2024年)
この構造を理解した上で、「では自分はどのゾーンを目指すか」を考えることが出発点になる。
02何が「稼げる副業」と「稼げない副業」を分けるのか
副業の種類と本業との関連性が、収入格差を生む最大の要因だ。

調査データで特に注目したいのが、副業の種類別の収入分布だ。
収入が高い副業の上位に並ぶのは「コンサルティング・アドバイザリー」「フリーランス専門職(ITエンジニア、デザイナー等)」「講師・セミナー登壇」といった、本業の専門性を直接転用するタイプ。
一方、収入が低い副業の代表格は「クラウドソーシングの軽作業」「アンケートモニター」「フードデリバリー」など、多くの方が参入できる労働集約型だ。
この差は当然といえば当然だが、重要なのは「なぜ多くの人が後者を選ぶのか」という問いだ。
答えは「始めやすいから」に尽きる。専門性を副業に転用するには、営業・提案・契約といった一定のビジネス開発コストがかかる。クラウドソーシングに登録してタスクをこなす方が、心理的障壁がはるかに低い。
ただし、ハイキャリア層にとってはここが分岐点になる。年収1,000万円以上の会社員が時給1,500円のタスクをこなしても、本業の時間単価と比べて合理性がない。むしろ、本業で培った専門性こそが最大の副業資産になりうる。
03ハイキャリア層が副業で「つまずく」3つのパターン
実態調査が示すもう一つの重要な発見は、副業に挑戦して「継続できなかった」層の理由分析だ。
副業を始めたが辞めた、または縮小した人の主な理由(複数回答)として上位に挙がるのは以下の3つ。
(出典:パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」2024年)
ハイキャリア層はこのうち①と③に引っかかりやすい。本業の責任が重い分、時間の余白が少なく、また社内のポジションを守りたいという心理も働く。
ここで重要になるのが「副業の設計思想」だ。時間を投入し続けなければ回らない副業は、本業との両立が構造的に難しい。最初から「仕組みで稼ぐ」方向に設計するか、初期投資(時間・労力)を集中させて後は自走させる形にしないと、結局は燃え尽きる。
04「時間を売る副業」から「事業」への移行ロードマップ
稼げる副業の共通点は、本業スキルの外販化と、仕組みによるスケール設計だ。
では具体的にどう移行するか。パーソル調査のデータと実務の観点を合わせると、以下のような段階的な移行が現実的だ。
ステップ2〜3の段階で多くの人が止まる。「もっと準備してから」「副業用のWebサイトを作ってから」と考えているうちに時間が過ぎる。最初の一歩は完璧でなくていい。まず市場に出て、フィードバックを得ることが先決だ。
05実例で見る:商社マン・Aさん(42歳、年収1,400万円)の副業設計
ここで一つの具体例を見てみよう。
Aさんのプロフィール
- —総合商社勤務、42歳、年収1,400万円
- —担当:東南アジア向け食品・農産物の輸出入ビジネス
- —副業歴:2年
Aさんが最初に試みたのは、スポットコンサルプラットフォームへの登録だった。「東南アジアの食品輸出規制」「現地バイヤーとの交渉実務」という専門知識が、食品メーカーやスタートアップから需要があることがわかった。
最初の3ヶ月は月2〜3回のスポット面談で月収8〜12万円。その後、継続的なアドバイザリー契約を2社と締結し、現在は月収30〜40万円を安定的に稼いでいる。
本業への影響を最小化するため、Aさんが設けたルールは明確だ。
- —副業の打ち合わせは平日夜か土曜午前のみ
- —本業と直接競合する企業は受けない
- —月の副業時間は最大20時間以内
「本業の仕事で得た知識を、別の文脈で使っているだけ。新しいことを一から勉強する必要がない分、準備コストが低い」とAさんは語る。
本業で積み上げた専門性を「外販可能な資産」と捉え直した瞬間、副業の設計が変わった好例だ。
06副業収入の税務と社会保険:見落としがちなコスト構造
副業収入が増えると、税・社会保険の追加コストが発生する。事前に試算しておくことが重要だ。
副業で稼ぐほど、手取りが単純に増えるわけではない。意外に見落としがちなのがコスト構造だ。
副業収入が年間20万円を超えると確定申告が必要になる(給与所得者の場合)。また、副業収入は「雑所得」または「事業所得」として課税され、本業の給与と合算した総所得に対して所得税・住民税が課される。
※税務判断は税理士にご確認ください。上記はあくまで概算シミュレーションです。
ここで重要になるのが経費計上と法人化の検討だ。
事業所得として認定されると、業務に関連する費用(通信費、書籍代、交通費、一部の設備費等)を経費として控除できる。雑所得との違いは大きく、副業の規模・継続性・利益追求の実態によって判断が分かれる。
法人化の損益分岐点については、一般的に副業収入が年間500〜600万円を超えると、法人税率(中小法人の実効税率は約23〜25%)が個人の限界税率を下回るケースが出てくる。また、役員報酬として自分に給与を払うことで給与所得控除も活用できる。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人(合同会社) |
|---|---|---|
| 設立コスト | ほぼ0円 | 6〜10万円程度 |
| 税率(目安) | 最大55%(所得税+住民税) | 実効税率23〜25% |
| 経費の範囲 | 比較的狭い | 比較的広い(交際費等) |
| 社会保険 | 国民健康保険(収入連動) | 社会保険(定額設計可) |
| 事務コスト | 低い | 高い(決算・申告等) |
法人化は「節税のゴール」ではなく、事業の規模・継続性に合わせて判断すべき手段だ。規模が小さい段階で法人化すると、維持コストが収益を上回ることもある。
07「副業解禁」の恩恵を受けているのは誰か——調査データが示す構造的な偏り
ここで一歩引いて、調査データ全体を俯瞰してみる。
パーソル総合研究所の調査では、副業の実施率・収入ともに本業の年収・職種・学歴と強い相関があることが示されている。
具体的には、本業年収が高いほど副業収入も高い傾向がある。年収1,000万円以上の層では、副業月収10万円以上の割合が全体平均の約2.5倍に達する。
この構造は直感的にも理解しやすい。高年収層は希少な専門スキルを持ち、人脈も広く、副業の営業・獲得コストが低い。また、本業収入が安定しているため、副業の初期投資(時間・労力)に耐えられる余裕がある。
逆に言えば、副業ブームの恩恵を最も受けやすいのはすでに恵まれた立場にある層だ。「副業で格差是正」という語り方は、データを見る限り少し楽観的すぎる。
ただし、これはハイキャリア層にとって「やらない理由」ではなく「やる理由」になる。自分が構造的に有利なフィールドで勝負しない手はない。
重要なのは、その優位性を「時間を売る」方向ではなく、「仕組みを作る」方向に使うことだ。コンサルタントとして時間を切り売りするだけでは、本業と同じ「労働収入」の延長に過ぎない。本業スキルを起点に、コンテンツ・教材・プラットフォーム・顧問契約の積み上げといった「ストック型の収益構造」を設計できるかどうかが、長期的な差を生む。
08副業を「育てる」ための時間管理——本業を守りながら動く
副業で失敗する最大の原因は、時間管理の失敗だ。本業への影響を最小化する設計が先決。
パーソル調査で副業を辞めた理由の第1位が「時間の確保」だったことはすでに触れた。では、継続できている人は何が違うのか。
調査では、副業を継続している人の特徴として「副業に充てる時間をあらかじめ決めている」「本業の繁忙期は副業量を意図的に減らす」という行動パターンが浮かぶ。
副業の時間設計で有効なのは、以下の考え方だ。
- —週単位ではなく月単位で管理する:週ごとの波を気にせず、月20時間を上限に設定してその中でやりくりする。繁忙期は5時間、閑散期は35時間、という調整が可能になる。
- —副業専用の「思考ブロック」を設ける:副業の戦略・営業・案件管理は、本業の思考モードとは切り替えが必要。週1回2時間の「副業デー」を固定するだけで、散漫な時間投入より成果が出やすい。
- —アウトプットで管理する:「週3時間副業に使う」ではなく「今月は新規提案を2件する」とアウトプットで目標を設定する。時間を使うことが目的化するのを防ぐ。
本業が最優先であることは変わらない。副業は本業の「保険」であり「資産形成の第二の柱」であって、本業の代替ではない。その優先順位を明確にした上で、副業に割けるリソースを逆算して設計する。これが長続きする副業の基本構造だ。
09まとめ:データが示す「次の一手」
パーソル総合研究所の調査が浮き彫りにしたのは、副業の量的拡大と質的格差の並存だ。副業人口は増えているが、収入の大半は少数の「設計できている人」に集中している。
- —副業実施者の約60%が月収5万円未満。収入格差は副業の種類と本業スキルの転用度で決まる
- —ハイキャリア層の優位性は「本業の専門性」。これを外販可能な形に設計できるかが分岐点
- —「時間を売る」から「仕組みで稼ぐ」への移行が、副業を事業に昇華させるカギ
- —税・社会保険のコスト構造を事前に把握し、法人化のタイミングを見誤らない
副業は「稼ぐ手段」である前に、「本業一本に依存するリスクを分散する戦略」だ。年収1,000万円以上の会社員が最も警戒すべきリスクの一つは、会社という単一の収益源への過集中だ。副業・事業収入の柱を作ることは、資産形成と同様に「分散」の思想につながる。
最初の一歩は小さくていい。スポットコンサルへの登録、知人からの相談を有償化する、社外の勉強会で登壇する——そういった小さなテストから始めて、市場の反応を見ながら設計を磨いていく。
副業の実態と戦略についてさらに深く知りたい方は、TEKOのキャリア・事業構築に関する関連記事もあわせてご覧ください。副業設計から法人化の判断基準まで、ハイキャリア層向けの実践的な情報を継続的に発信しています。
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