資産形成
サラリーマン大家の与信戦略|高属性が資産形成で有利な理由
本業年収が1,100万円あっても、家賃年収が2,000万円を超えても、「会社員を辞めない」という選択をするサラリーマン大家が増えている。
一見、矛盾しているようにも見える。だが実際には、これは非常に合理的な判断だ。高属性の会社員であることが、不動産投資における最大の「資産」になっているからである。
本記事では、年収1,000万円超のハイキャリア層がなぜサラリーマン大家という立場にこだわるのか、その構造的な理由をデータと実例を交えて解説する。

01「与信」は目に見えない資産である
高属性会社員の最大の武器は、融資枠——つまり「与信」だ。これが不動産投資の収益規模を決定的に左右する。
銀行が融資審査で見るのは、主に「属性」と「物件の収益性」の2軸だ。属性とは、勤務先・勤続年数・年収・資産状況の総合評価を指す。大手企業勤務で年収1,000万円超、勤続10年以上ともなれば、多くの金融機関でプレミアム扱いを受ける。
日本銀行の統計によると、2024年時点の不動産向け銀行貸出残高は約110兆円(日本銀行「貸出・資金吸収動向等」)。この巨大な融資市場において、金融機関は「貸し倒れリスクの低い借り手」を常に探している。高属性サラリーマンはまさにその筆頭格だ。
| 属性 | 融資可能額の目安 | 金利の目安 |
|---|---|---|
| 大手企業勤務・年収1,000万円超 | 年収の10〜20倍 | 1.5〜2.5% |
| 中小企業勤務・年収700万円 | 年収の5〜10倍 | 2.5〜3.5% |
| 個人事業主・年収1,000万円 | 年収の3〜7倍 | 3.0〜4.5% |
| 専業大家(法人のみ) | 物件評価次第 | 3.5〜5.0% |
同じ年収でも、勤め先と雇用形態によって融資条件がこれほど変わる。会社員であることそのものが、融資市場における「信用証明書」として機能しているわけだ。
02なぜ不動産投資家が会社員を「辞めない」のか
家賃年収が本業を超えても会社員を続ける理由は、感情論ではなく純粋に数字の問題だ。

不動産投資において、融資の可否と条件は収益規模を直接決める。たとえば年収1,100万円の会社員が、融資倍率10倍で1億1,000万円の融資を受けられたとする。これが専業大家になった瞬間、同じ物件・同じ収益実績でも融資倍率が下がり、次の物件取得が難しくなるケースが多い。
具体的に計算してみよう。
もちろんこれは単純化した試算だが、「会社員を辞める=与信を手放す」という構造は現実だ。
不動産投資家の間では「サラリーマン大家は卒業するもの」という考え方もある。だが収益規模が大きくなればなるほど、次の物件を取得するための融資力が重要になる。会社員の給与という安定収入が、その融資力を支え続けているのだ。
03高属性サラリーマン大家の「アセットアロケーション」設計

高所得者の資産形成を考えるとき、不動産だけに集中するのはリスク管理として粗い。重要なのは、不動産を「ポートフォリオの一部」として位置づけることだ。
年収1,000万円超の会社員が取り得るアセットアロケーションの典型例を整理すると、以下のようになる。
| 資産クラス | 特徴 | 流動性 | 期待リターン | 税制優遇 |
|---|---|---|---|---|
| 不動産(実物) | レバレッジ可・インフレヘッジ | 低 | 5〜8%(実質) | 減価償却・経費計上 |
| 株式(インデックス) | 流動性高・分散効果 | 高 | 5〜7%(長期平均) | NISA非課税枠 |
| iDeCo | 節税効果大・長期固定 | 極低 | 3〜6% | 掛金全額所得控除 |
| 債券・MMF | 安定・守りの資産 | 高 | 2〜4% | なし |
| 現金・預金 | 緊急資金・手元流動性 | 最高 | ほぼゼロ | なし |
ここで注目したいのが、不動産の「税制優遇」の部分だ。実物不動産は、減価償却費を経費として計上できるため、帳簿上の赤字を給与所得と損益通算できる(ただし土地部分の借入金利子は損益通算の対象外)。
年収1,100万円の会社員が不動産で年間200万円の減価償却赤字を出した場合、課税所得が圧縮される。所得税と住民税を合わせて約33%の実効税率となるケースでは、単純計算で66万円程度の節税効果が生まれる(※実際の課税所得・税率・節税額は個人の控除状況により異なります。税務判断は税理士にご確認ください)。
この節税効果は、専業大家では享受できない。給与所得があってこそ機能する制度設計なのだ。
04実例で見る:年収1,100万円大家の10年間の軌跡

ここで、実際に近いモデルケースを見てみよう。
Aさん(45歳・大手商社勤務・年収1,100万円)
30代後半から不動産投資を開始。最初の物件は都内の中古ワンルームマンション(購入価格2,800万円、フルローン)。その後、属性を活かして融資枠を拡大し、10年間で都内・横浜エリアを中心に合計8戸を保有するに至った。
現在の資産状況:
- —物件合計評価額:約2億4,000万円
- —借入残高:約1億6,000万円
- —純資産(不動産分):約8,000万円
- —家賃年収:約2,100万円(平均利回りが高かった時期に購入した物件を含むため平均利回りは約8.7%。空室損・管理費控除後の手取りは約1,400万円)
Aさんが10年間で最も重視したのは「次の融資枠を守ること」だという。物件の表面利回りよりも、金融機関との関係性と自身の属性維持を優先してきた。
「専業大家になる選択肢は何度も考えた。でも計算すると、会社員を続けることで得られる融資力の価値が、本業の給与よりも大きいと気づいた」(Aさん談)
意外に見落としがちなのが、この「融資力の経済的価値」という視点だ。給与は労働の対価だが、融資枠は信用の対価。後者は、資産規模が大きくなるほど価値が増す。
05「サラリーマン大家 vs 専業大家」どちらが有利か

この問いに対する答えは、資産規模と目的によって変わる。一律に「どちらが正解」とは言えないが、判断軸は明確にできる。
国税庁の統計(令和4年分申告所得税の実態)によると、不動産所得の申告者数は約319万人。そのうち給与所得との重複申告者(=サラリーマン大家)は約180万人と推計され、全体の56%超を占める。
つまり、不動産投資家の過半数は「会社員を続けながら大家をしている」という現実がある。これは偶然ではなく、構造的な合理性の結果だ。
06「行動経済学の罠」——高属性でも陥る判断ミス

ハイキャリア層だからこそ、特定のバイアスに引っかかりやすい面がある。
1. 「現状維持バイアス」による機会損失
会社員としての安定に慣れすぎて、物件取得のタイミングを逃すケースだ。「もう少し貯めてから」「金利が下がったら」と先送りを続けた結果、物件価格の上昇に追いつけなくなる。
国土交通省の「不動産価格指数」(2024年時点のデータ)によると、2013年を100とした場合の住宅総合指数は約165。10年間で65%上昇している。「待つ」ことのコストは、低金利環境が続いた時代よりも大きくなっている。
2. 「コントロール幻想」による過集中リスク
自分の得意領域(例えば都内ワンルーム)に過度に集中するケース。「自分はこのエリアを熟知している」という自信が、分散投資の視点を曇らせる。
実際、エリア・物件タイプの集中は、空室率や地域経済の変動に対して脆弱だ。高属性であるほど融資枠が大きく、集中リスクも比例して拡大する。
3. 「サンクコスト」による撤退遅れ
購入した物件の収益性が想定を下回っても、「ここまで投資したから」という感情で保有を続けるケース。不動産は流動性が低いため、このバイアスが特に強く出やすい。
出口戦略は購入前に描く。これが鉄則だが、意外に実践できていない人が多い。
072026年の金利環境で変わる「有利・不利」の境界線
日銀は2024年3月にマイナス金利を解除し、同年7月に追加利上げを実施した。その後も段階的な政策変更が続いており、2025年1月時点では政策金利は0.5%となっているというシナリオの下では、サラリーマン大家の戦略はどう変わるかを考えておく必要がある(※最新の金融政策については日本銀行の公式発表をご確認ください)。
変動金利ローンの返済額増加リスク
多くの不動産投資ローンは変動金利型だ。政策金利が1%上昇すると、借入1億円に対して年間約100万円の利払い増となる(元利均等返済の場合、実際の増加幅はローン残高・残期間による)。
キャッシュフローに余裕があるうちに、一部を固定金利へのシフトや繰り上げ返済に充てる判断が現実的だ。
一方で、高属性の優位性は変わらない
金利上昇局面では、金融機関が融資審査を厳格化する傾向がある。結果として、属性の低い投資家は融資を受けにくくなり、市場への参入障壁が上がる。
高属性サラリーマンにとっては、競合が減るという側面もある。優良物件を取得できる機会は、属性の差が広がるほど「持てる者」に集中しやすくなる。
| 金利環境 | 高属性会社員への影響 | 専業大家への影響 |
|---|---|---|
| 低金利時代 | 融資取得が容易・規模拡大しやすい | 同様に融資取得が比較的容易 |
| 金利上昇局面 | 審査厳格化でも属性で通過しやすい | 融資が通りにくくなるケースが増加 |
| 高金利定着時 | キャッシュフロー圧迫も属性で次の手が打てる | 新規取得が困難になりやすい |
08まとめ:「辞めない」は戦略的な選択だ

本記事のポイントを整理しよう。
- —与信は目に見えない資産: 高属性会社員の融資力は、不動産投資の収益規模を決定的に左右する。会社員であることが「信用証明書」として機能している
- —会社を辞めると融資力が落ちる: 家賃年収が本業を超えても、専業転換で融資倍率が半減するケースは珍しくない。機会損失は年間数百万円規模になりうる
- —損益通算の節税効果は給与所得があってこそ: 不動産の減価償却赤字と給与所得の損益通算は、サラリーマン大家固有の優位性だ
- —金利上昇局面でも高属性の優位は続く: 審査が厳しくなるほど、属性の差が融資の可否に直結する。市場の淘汰は高属性者に有利に働く
不動産投資は「物件選び」だと思われがちだが、実際には「融資設計」の勝負でもある。そして融資設計の質を決めるのは、物件の収益性だけでなく、借り手の属性だ。
高属性サラリーマンが「辞めない」のは、感情や習慣ではない。数字と構造を見た上での、合理的な選択なのだ。
自分の属性をどう活かすか、具体的な融資戦略や物件選びの基準を一緒に考えたい方は、TEKOの公式LINEで個別相談を受け付けています。あなたの年収・資産状況に合ったアドバイスをお届けします。

※本記事の計算例・試算はあくまでも参考値です。実際の融資条件・税務処理については、金融機関および税理士にご確認ください。
おすすめ記事
確かな実践知が集う場所
医師・GAFAM・5大総合商社・外資系戦略コンサル...
日本トップTierのビジネスパーソンも実践している
令和時代の新たなキャリアデザイン
人生が飛躍する「テコの効かせ方」
お受け取りはこちらから