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2026年NISA改正で変わること:旧制度終了の全論点
「NISAは2024年に大幅改正されたから、もう確認不要」という認識は少々危険だ。
2026年、旧一般NISAで保有している資産の非課税期間が順次終了を迎える。何も手続きしなければ自動的に課税口座へ移され、以後の運用ルールがひっそりと変わる。対応を誤れば、含み益に対して20.315%の税金が将来突然発生するリスクがある。
制度改正の「本番」は、実はこれからだ。本記事では2026年のNISAをめぐる変化点を制度設計の意図から読み解き、ハイキャリア層が取るべき具体的な行動を整理する。

012026年が「制度の節目」である理由
2026年が重要な分岐点となるのには、3つの構造的な理由がある。
第一に、旧一般NISAで2022年に購入した資産の5年間非課税期間が2026年末に終了する。第二に、新NISAが3年目を迎え、非課税枠の使い方の差が投資家間で表面化してくる。第三に、金融所得課税の強化議論が政策サイドで再燃しており、NISA戦略の重要性が問い直されている。
旧一般NISAは2014年にスタートした制度で、年間最大120万円を5年間非課税で運用できた。2023年末に新規購入は終了したが、すでに保有している資産の非課税期間はそのまま継続される。問題は「非課税期間終了後に何が起きるか」を正確に把握している投資家が、思いのほか少ないことだ。
旧一般NISAの非課税期間終了スケジュールは以下の通りだ。
| 購入年 | 非課税期間の終了 | 対応が必要な時期 |
|---|---|---|
| 2021年 | 2025年12月末 | 2025年中(終了済み) |
| 2022年 | 2026年12月末 | 2026年中 |
| 2023年 | 2027年12月末 | 2027年中 |
旧つみたてNISAについては非課税期間が20年間のため、2026年に期限が到来する資産はない。同制度の開始が2018年である以上、最も早い期限切れは2037年になる。この2つの旧制度の違いを混同しているケースも多いので注意が必要だ。
なお金融庁の公表データ(2024年3月末時点)によると、旧一般NISA口座の保有者数は約1,180万口座。そのかなりの部分が2026〜2027年にかけて「期限到来」という局面を迎える計算になる。
02非課税期間終了後、資産は「自動的に」どうなるか
非課税期間が終了した後、何も手続きをしなければ資産は自動的に課税口座(特定口座または一般口座)に移管される。
ここで多くの人が見落とすのが、「移管時の時価が課税口座での取得価額になる」という仕組みだ。
たとえば旧一般NISAで2022年に100万円で購入した株式が、2026年末に160万円に値上がりしているとしよう。この場合、160万円が課税口座での取得価額として記録される。NISA非課税期間中に生じた60万円の含み益には税金がかからず、160万円を超えた分にのみ将来の課税が発生する仕組みだ。一見すると問題はなさそうに見える。
しかし逆のケースを考えると話は変わってくる。
含み損を抱えたまま非課税期間終了を迎えると、損失を活用できないまま低い取得価額で課税口座に移管されてしまう。その後さらに値下がりすれば、その分は損益通算に活用できるが、すでに発生した損失の回収手段は失われる。
これが2026年末に旧NISA保有者が直面する最大の盲点だ。証券会社の窓口でも積極的に説明されることが少なく、気づいたときには手遅れになっているケースが相次ぐことが予想される。
03「ロールオーバー不可」という制度上の壁
旧NISAから新NISAへの直接ロールオーバーは、制度上できない。
旧一般NISAの時代には、5年の非課税期間終了後に翌年分のNISA枠へロールオーバーする制度があった。しかし2024年からの新NISAには、旧NISAからの資産を直接「乗り移らせる」仕組みは設けられていない。
「新NISAに移し替えたい」と考えている場合は、①旧NISAで資産を売却 → ②売却代金を手元に受け取る → ③新NISAで改めて購入という3ステップが必要になる。
注意したいのは、旧NISA内で売却した代金は即日新NISAに入金できるわけではなく、株式なら約定から2営業日後に決済されるという点だ。年末ギリギリに手続きをしようとすると、2026年の最終営業日に間に合わないリスクもある。
2026年11月〜12月初旬を目安に動き始めることを推奨する。
04新NISAの現在地:3年目に見えてきた「使い方の差」
2024年に始まった新NISAは、非課税期間が無期限、年間投資上限が360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯非課税限度額が1,800万円という大幅に拡充された制度だ。
3年目に差し掛かる今、投資家間で「枠の使い方の質」に明確な差が生じてきている。
金融庁の2024年度NISA利用状況調査によると、新NISA口座開設者のうち年間投資額が300万円以上の層は全体の約8%にとどまる。多くの人が「毎月3万〜5万円のつみたて」にとどまっており、成長投資枠(年240万円)をほぼ活用できていない状況だ。
年収1,500万円以上の層でも、1,800万円の生涯枠を一気に埋めることが必ずしも最善ではない。枠を早く使い切ることで「売却して枠が復活する」という新NISAの設計メリットを享受できなくなるからだ。
税引き後リターンの観点では、非課税口座の優位性は年利換算で約0.4〜0.8ポイント分のコスト削減効果に相当する。これを10年・20年の複利で考えると、無視できないレベルの差になる。
05ケーススタディ:年収1,800万円の総合商社勤務・40代男性のケース
具体的な事例で考えてみよう。
年収1,800万円の総合商社勤務・42歳男性。2022年に旧一般NISAで日本株(商社株)に120万円投資し、2026年末時点で評価額は190万円。新NISAはすでに開設済みで、成長投資枠に約600万円を投資済み。
このケースで取りうる選択肢は3つだ。
選択肢A: 2026年中に旧NISAで売却し、新NISAへ組み替える
190万円で売却し、NISA非課税期間中の70万円の利益をそのまま非課税で確定する。売却代金を新NISAの成長投資枠(残り600万円以上の余枠がある)に再投資することで、引き続き非課税で運用を継続できる。同じ銘柄を買い直すことも可能だ。
選択肢B: 課税口座に移管して継続保有する
190万円が課税口座での取得価額になるため、190万円を超えた値上がり分にのみ課税される。この商社株を長期保有する前提で、配当利回りが高く今後もホールドしたい場合には合理的な選択だ。ただし課税口座での配当に対して20.315%の源泉徴収が発生する点は意識する必要がある。
選択肢C: 何もせず自動移管を待つ
制度上は問題ないが、能動的な判断を放棄することになる。上記2つの選択肢の比較検討をした上でBを選ぶのと、単なる放置でCになるのでは意味合いが全く異なる。
年収1,800万円クラスでは、配当所得・利子所得など金融所得が多い場合に課税口座での運用コストが膨らむ。この事例では選択肢Aが合理的だが、保有する銘柄の将来見通しと新NISA枠の残量次第で判断は変わる。
※税務判断は個別の所得状況により異なるため、税理士にご確認ください。
06「次の改正」を先読みする:金融所得課税議論の行方
2026年のNISA対応を考えるうえで、政策的な文脈も把握しておく必要がある。
日本の金融所得課税は現行20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の一律分離課税だ。年収が5,000万円であっても株式売却益への税率は同じで、高所得者に有利な構造になっている。
この「構造的な軽さ」に対して、与党内から「高所得者の金融所得に累進税率を適用すべき」という意見が繰り返し出ている。2023年の税制調査会でも議題に上がり、一定の検討が行われた経緯がある。
ただし現時点では実施に至っていない。「貯蓄から投資へ」を旗印に掲げてNISAを大幅拡充した政策と、金融所得課税強化は根本的に矛盾するからだ。NISAで投資を促しながら税率を上げれば、政策の整合性が問われる。
| 国 | 金融所得税率 | 累進課税との連動 |
|---|---|---|
| 日本 | 20.315%(一律) | なし(分離課税) |
| 米国 | 0〜23.8%(長期保有) | あり(所得水準に連動) |
| ドイツ | 26.375%(一律) | なし |
| イギリス | 10〜20%(CGT) | あり(所得水準に連動) |
| フランス | 30%(一律) | なし(2018年以降) |
政策の方向性として読み取るべきは、「NISA非課税空間は守られ、それ以外は課税強化の可能性が残る」という構図だ。
課税口座での投資収益より、NISAという非課税の「器」に資産を集中させる戦略の重要性は今後も増すことはあっても減ることはない。この意味で、新NISAの生涯枠1,800万円をどう埋めるかは、単なる投資判断ではなく税務上の最適化でもある。
072026年末までに確認すべき6項目
状況を整理し、具体的なアクションに落とし込もう。
- ✓旧一般NISA口座の保有資産と購入年を証券会社の管理画面で一覧確認した
- ✓各資産の非課税期間終了年(2026年末 or 2027年末)を把握した
- 含み損がある旧NISA資産について、売却して損失確定するか移管するかを検討した
- 含み益がある旧NISA資産について、売却して新NISAに組み替えるか課税口座で保有継続するかを判断した
- 新NISAの生涯枠1,800万円に対する現時点の使用額を確認した
- iDeCoとの役割分担を見直し、所得控除の最大化と非課税運用の両立を確認した
特に見落としが多いのが、含み損を抱えた旧NISA資産の取り扱いだ。「どうせ下がっているから放置」という判断で課税口座への自動移管を待つと、移管後の低い取得価額が固定され、その後の値動きに対してのみ損益通算が可能になる。一方、非課税期間内に売却すれば損失は確定しないが、損失として記録されることもない。
どちらが正解かは個人の保有資産全体の構成・今後の値動きの見込み・課税口座での含み益・損との相殺関係など複数の要素による。「一律の答え」はないため、少なくとも選択肢を正確に把握した上で判断することが肝心だ。
08まとめ
2026年のNISAをめぐる変化点と対応の核心を整理する。
- —旧一般NISAの2022年購入分は2026年末が非課税期間の最終年。放置すると課税口座へ自動移管され、以後の運用ルールが変わる
- —含み損がある資産の扱いに要注意。移管時の時価が課税口座での取得価額になり、NISA期間中に生じた損失は損益通算に使えない
- —旧NISAから新NISAへの直接ロールオーバーは不可。「売却→新NISAで再購入」という手順を2026年12月初旬までに完了させる
- —金融所得課税強化の議論が続く中、NISA非課税空間を戦略的に活用することの優位性はむしろ高まっている
- —iDeCoとの組み合わせで課税所得の圧縮と非課税運用を並立させることが、高所得者の最適解に近づく
NISAは「一度設定すれば完了」の制度ではない。旧制度から新制度への移行期である2026年は、放置コストが最も高くなるタイミングでもある。制度の仕組みを正確に理解することが、そのまま手取りの差になる局面だ。
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